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一般社団法人

新潟馬主協会

Follow a dream Vol.01 飯塚知一×土屋 伸之

更新日:10月6日

新潟馬主協会の飯塚知一会長が、競馬を愛してやまないゲストを招いて対談する「フォローアドリーム」。第一回のゲストは漫才コンビ・ナイツの土屋伸之氏をお迎え致しました。ダビスタがきっかけで高校生の時に競馬ファンになった土屋氏とやはり高校時代に競馬に興味を持った飯塚会長が、土屋氏の描く馬の絵の話題を皮切りに、それぞれの立場での競馬の楽しみ方や引退競走馬支援まで、じっくりと語り合います。時には笑い、時には脱線し、時には真剣に意見交換をしながら、競馬を愛する者同士の馬談議は大いに盛り上がりました。司会は競馬番組でキャスターを務める梅田陽子アナウンサーです。


左:梅田 陽子/中:飯塚 知一/右:土屋 伸之
左:梅田 陽子/中:飯塚 知一/右:土屋 伸之

競馬との出会いはともに高校時代から


梅:まずは本日のゲストである土屋さんが、どれほどまでに競馬が好きかが一目で分かるもの、ご自身が描かれた「馬の絵」をお持ちいただきました。


土:はい。こちらです。


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梅:この絵はあの馬ですか?


土:これはオルフェーヴルが凱旋門賞に行った時の写真を見て描いたものです。


飯:私の馬ではないですね(笑)。


土:すみません。ダークシャドウは好きでよく本命は打っていたのですけど。


梅:描き上げるのにどのくらい時間がかかるのですか?


土:100時間くらいかかります。絵心があって描くというよりは、ただ馬の写真をずっと見ていられるというか、集中力が続きます。馬体を見ていると飽きないんですよね。


梅:飯塚会長、ご覧になっていかがですか?


飯:すごいですね。間近で見ると躍動感がありますね。


梅:絵は何で描かれているのですか?


土:これは色鉛筆ですね。ただただ細かい作業をしているだけです。


飯:このような絵は馬の骨格を知らないと描けないんですよね。解剖学とか。馬の骨の仕組みを見て描くんですよ。


土:そうですね。筋肉の筋の流れとか、描きながらそういうのを見つけるのが喜びですね。


梅:描く馬はどのように決めているのですか?


土:写真を見て描きたいなと思ったら描いちゃいますね。


飯:では私の馬が優勝した時は是非お願いしたいです。


梅:土屋さんはどのような経緯で競馬をお好きになられたのでしょうか?


土:高校生の時にダビスタですね。ダビスタを紹介してくれた友達と競馬を見に東京競馬場に行って、競馬博物館でテンポイントなどの昭和のレースを見て一気に引き込まれました。あとはPOGです。友人たちとドラフトで2歳馬を指名して、1年間仮想馬主として楽しむんです。本物の馬主さんの前で申し訳ないのですが、自分が本当の馬主だと思い込めます。


飯:ぺーパーオーナーになった馬は、実際どうだったのですか?


土:初めてダービーを勝ちました。レイデオロです。僕はレイデオロのオーナーです(笑)。


飯:馬はどのように見つけるのですか?


土:血統や名前で決めたり、結構インスピレーションで決めることが多いですね。初年度の持ち馬にファレノプシスがいまして、血統もナリタブライアンの従妹で、POG1年目から桜花賞を勝ちました。


飯:(ファレノプシスは)良い名前ですよね。馬の名前は走ると良く聞こえるようになってくるんですよ。馬名は9文字でしょ。洒落た名前をつけると、(既につけられているので)だいたい落とされてしまいます。冠名をつけたら通りやすいと友人から聞いて、シャドウをつけるようになりました。


土:シャドウの由来は何ですか?


飯:実は競馬をやめようと思っていた時に、最後にこれだけは買っておこうと思って購入した馬がオープン馬になったんですよ。それがシャドウクリークでした。そこからシャドウを冠名にするようになりました。その馬のおかげで馬主をずっと続けられています。


梅:飯塚会長は馬主生活は何年になるのですか?


飯:33年ほどですね。よく続けてこられましたよ。


梅:競馬との出会いは?


飯:高校が場外馬券場から歩いて5分くらいのところにあったので、先輩から馬券を買いに行かされたんです(笑)。それから自分も競馬に興味を持ちました。


梅:オーナーになるきっかけは?


飯:今から40年くらい前ですけど、競馬場の指定席を買うのに朝7時くらいから並んでいまして、トイレに行きたくなったので警備員さんに「すみません、トイレを貸してもらえますか」と言ったら、まだ無人の競馬場に入れてもらえたんです。じゃあこのチャンスに競馬場を見学しちゃおうと。場内をグルーッと回って行きついたところが馬主席で、赤い絨毯が敷いてあって、馬主席から眺めた景色が良かったんですよね。将来こういう場所で競馬を見られるようになったら良いだろうなと。それが大学生くらいの時で、その時からずっと思い続けてきたのが十数年たって現実になりました。



ファンと馬主 それぞれの楽しみ方


梅:競馬は人それぞれいろいろな楽しみ方があると思うのですが土屋さん流の楽しみ方を教えてください。


土:若手の頃は土日は競馬場によく行っていましたし、G1など大きいレースの時はとにかく歴史的瞬間に間近で立ち会いたいという思いが強かったので、金曜日から競馬場の門の前に並んでいました。

そこで夜通し、仲間たちと新聞を開いて激論を交わしながら予想をしていると、前後に並んでいた知らないおじさんたちも話に入ってきてどんどん盛り上がって、金曜日からあっという間に時間を過ごせました。


梅:やはり競馬場の臨場感は良いですよね。


土:そうですね。それで僕、一生に一度、凱旋門賞に行きたいとずっと言っていて、去年ついに行ったんですよね。一昨年のジャパンCでアーモンドアイの世界レコードを見た時に来年に行くと決めて。


梅:仕事は大丈夫だったのですか?


土:1年前から言えば何とかなるだろうと。航空券を取った直後にアーモンドアイの回避が決まったのですけど(笑)。凱旋門賞ではゴール前の立ち見のところに行って、自分が昔ダービーなどで並んで見た時と同じような観戦の仕方ができましたし、一生の思い出になりました。


飯:日本のG1との違いはありましたか?


土:ダービーや有馬記念を見ていた時と同じ雰囲気でしたし、日本人と同じように盛り上がるというのを感じられて良かったです。


飯:フランスではどのように馬券を買われたのですか?


土:凱旋門賞の時は興奮しすぎて馬券を買うのを忘れていました(笑)。行きの飛行機の中で買い方をたくさん勉強して、あんなに楽しみにしていたのに。レースが始まる直前に、あっ買ってないと気づいて、最後まで何を応援していいのかわかりませんでした(笑)。


飯:ところで僕は若い頃、週末までの1週間が待ち遠しかったですけど、そういう経験はありませんか?


土:週頭から予想をしていて、どんどん自分の予想がコロコロ変わるんですよ。それがまた楽しかったです。


梅:調教の映像を見て、また予想が変わって…。


飯:今はグリーンチャンネルなどメディアがありますけど、昔は映像で調教が見られませんでした。


梅:では何を見て判断していたのですか?


土:タイムと記者の評価などですよね。


飯:僕は「馬」という雑誌を毎週買って、それを見ながら予想をするのが楽しかったですね。


梅:オーナーになってからも予想をして馬券を買われるのですか?


飯:いえ、馬主になってからは馬券はあまり買わないですね。自分の馬の馬券を買うと絶対に損するので、自分の馬が出ているレースは特に買いません。自分の馬が勝つのは、10回に1回くらいの確率なんですよ。勝率が1割超えている人は、非常に良い成績だと思います。


梅:それくらい大変なのに馬主を続けていらっしゃるのは?


飯:好きだからです。30年くらい前に10人ほどの友達と馬主を始めたのですけど、皆辞めてしまいました。やはり忍耐と我慢強くないといけないですね。昔は牧場に行ってこの馬をくださいという買い方で「馬主になった飯塚ですが」と訪ねても、調教師と一緒に行かないと馬を見せてもらえませんでしたしね。今のオーナーの方は、セリで非常にフェアに買うことができますし、良い時代です。


梅:オーナーになられてからの楽しみ方、良さを教えてください。


飯:馬券を買っていた時とは違って、子馬と出会う楽しみがありますね。血統登録課でその年生産された約7000頭の資料を作ってもらい、それに全部目を通して、その中から何頭か選んで牧場に見に行きます。気に入った馬を買えるかわからないですけど、幸運にもその馬が手に入ると1歳、2歳と、その成長過程を楽しみます。そうすると牧場の方との会話も楽しいですから。若い頃から日高を1人で歩いていたので、結構の牧場の人は僕のことを知っていますよね。馬を介して様々な出会いや、普通なら会えないような方とお付き合いができるようになったのも、楽しみの1つです。



これからの競馬~引退競走馬支援を形に〜


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梅:これから競馬に求めること、あるいはやってみたいことをお聞きしたいのですが、土屋さんはいかがですか?


土:今、藤田菜七子ジョッキーがすごく人気で、ファンも増えていますよね。スポーツという観点からいうと、競馬の騎手が一番閉鎖的な感じがするんです。女性が出てきただけですごく盛り上がるわけですから、例えば一流大学卒の騎手というだけでもマスコミは食いつくでしょうし、元野球選手とか元高校球児がジョッキーになるというパターンがあってもいいと思います。そのように幅広い経歴の人がジョッキーになれるようになったら面白いと思っています。


飯:なぜ閉鎖的かというとJRAが求めているのが公正競馬だからですね。調教師さんもジョッキーも、中で働いている獣医さん、装蹄師さんもすべてJRAが認めた人しか入れないようになっています。私は土屋さんが仰ったことには大賛成で、もう少し広く門戸を開くといろいろな人材が集まって、さらに競馬は面白くなるかなと思っています。


梅:土屋さんはリアル馬主になるおつもりはないですか?


土:憧れはあります、もちろん。ただこればっかりは…。すべてカミさんが握っていますからね…。


飯:オーナーになって、馬をシェアするという方法がありますし、あとは日本の一口馬主というのは良いシステムだと思いますよ。気軽に出資できて気持ちはオーナーですから。一口馬主をしている友達がいますが、400分の1口でも「僕の馬」と言っていますから。それで十分楽しめるのかなと思いますし、是非一口から始めていただきたいですね。POGの楽しみ方とはまた違いますよ。


土:そうですね、一口馬主あたりから、(奥さんに)お願いしてみようかなと思います。


梅:飯塚会長は、今後やってみたいことはありますか?


飯:これは遊びの部分になりますが、ジョッキー、調教師、廐務員さんの中には乗馬をされていた方が結構多いんですよ。そういう方を皆集めて乗馬大会を開催したら面白いのではないかなと。


梅:会長も乗馬をされていますからね。


飯:実は馬主になった時に、自分の馬を自分で調教しようと思ったんです。


土:すごい発想ですね。


飯:それで乗馬を始めたんですけどね。実際に育成場で乗ったことありますよ。競馬場で誘導馬には2 回ほど乗ったことがあります。


梅:今後さらにやっていきたいことがあると伺ったのですが?


飯:我々は競走馬で楽しませてもらっている立場ですので、競走が終わってからそのままでいいのかということを常に考えています。競走から引退した馬に対して、日本はあまり理解を得ていない面が多いので、競走馬のセカンドキャリアをもっと大事にして1頭でも多く幸せな余生を送れるような活動ができたらと思っています。


梅:具体的に何か始めていらっしゃることはありますか?


飯:これまで日本では、個人的に各所で引退馬の繋養をして頑張っていらしたんですよ。ほぼ無償に近いですから、皆さん、非常に苦労されています。私もいろいろ見学させていただいているのですけど、本当に皆さん馬が好きでよくやられているなと、それをもう少し広げることによって、1頭でも多くの引退した競走馬の命を救えるような活動をしていきたいと思っています。


土:子供と一緒に牧場や動物園に遊びに行くと、たまに乗馬用のお馬さんがいて、それが重賞を勝った馬だったり、そういう場所で偶然出会ったりするとすごい嬉しかったりするんですけど、そういう所はそんなに多くはないですもんね。


飯:そうですね。ただオーナーの責任もあるんですよ。オーナーが自分の馬に対して責任を持って最後まで見届けるというのが大事なのでしょうけど、これはそれぞれに考え方が違ってあまり興味を示さないオーナーもいらっしゃるので、今まで楽しませてくれた馬に対する思いをもう少し強く持ってもらえたらいいなと思っています。あとは日本もパート1国に昇格したのですが、その会議の中で世界的にも話題になっているのが引退競走馬についてです。日本も引退競走馬に対する取り組みを問われるので、JRAも積極的に関わるようになってきました。


梅:飯塚会長は、そのJRAの引退競走馬の検討委員会にも所属されているんですよね?


飯:JRAが補助できるのはお金ですよね。馬を養うにはお金がかかります。人件費も餌代もかかりますし、高齢馬になればなるほど治療費がかかります。皆さんそこで苦労されているので、これまでの実績を調べまして、顕著な活動をしているところ(養老牧場、団体等)には支援していこうということで、一昨年から予算を組んでお金を出しているところです。


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梅:まだまだ引退競走馬の課題はあると思うのですが?


飯:そうですね。引退した競走馬を一般の人が乗れるような乗用馬に仕上げるのは結構大変なんですよ。ですからその一端もJRAに担ってもらって、JRAなら乗れる人も多いですし、宇都宮に施設もありますので、そこで競走馬から乗用馬にリトレーニングしてから乗馬クラブにもらってもらうという活動も考えています。これはもう砂漠に水をやるような壮大な活動ですよね。1年に7000頭以上生まれるわけですからね。引退していく馬は年に2000頭くらいいますからね。それを考えるととてつもない活動なのかなと思いますけど、それでやめてしまったら何もなくなってしまう。この活動は続けていこうかなと思っています。


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土:僕のような立場の人間にも何かできることがあるのでしょうか?


飯:たくさんあると思います。どういう形で関わるかということだと思うんですよね。ファンの人たちでお金を出し合うとか、引退馬のオーナーになるとかですね。例えば大好きな馬が引退した時にファンの人たち皆で共同オーナーになって、好きな時に会いに行ったり、子供を連れていって触らせたり。そういう方法もあるのかなと。今大事なのはその馬を預かる場所ですよね。日本は国土も狭いですし、そういう方向にJRAが場所の提供ができたら良いのかなと思います。私も引退したシャドウクリークを生産牧場に帰してずっと預託しています。26歳になりますが、現役時代は通帳を作ってシャドウクリークが勝つたびに賞金を入れて引退した時のためにシャドウクリーク預金をしていました。


梅:引退馬という言葉をまだ知らない方もいらっしゃるかもしれないですよね。そのような話をするなど啓蒙活動が重要になってきそうですね?


飯:できるだけ多くの方にこういう活動をやっているのを知ってもらうのが最初なのかなと思うので、啓蒙活動をしていくのが一番大切なことだと思っています。


梅:そうですよね。少しずつできることがいろいろありそうですよね。


土:あるんじゃないかなと考えさせられましたし、競馬仲間やファンの皆さんに知ってもらえたらなと思いました。


飯:土屋さんはマスメディアに出ていらっしゃるので、競馬の番組に出演された機会などにこういう活動や牧場がありますよと情報を発信していただけるとかなり影響力があると思いますよ。


土:僕にもできる重要な役割があったんですね。


飯:競馬は楽しいですし、楽しませてもらっているわけですから、馬に対する敬意と恩を感じてそういう気持ちを持ってもらうのは大事だと思います。是非これからもお二人にご協力をお願いしたいと思います。



STAFF

direction・edit|Kenichi Hirabayashi(Creem Pan)

Writer|Sachie Sasaki

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