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一般社団法人

新潟馬主協会

Follow a dream Vol.04 飯塚知一×角居 勝彦

更新日:10月6日

新潟馬主協会の飯塚会長が馬を愛してやまないゲストをお招きして対談するフォローアドリーム。第四回目のゲストは、牝馬のウォッカで日本ダービーを制覇したのをはじめ数々のGIタイトルを手にした名馬を送り出してきた元JRA調教師の角居勝彦氏を前回に引き続きお迎え致しました。今回は角居氏が手掛ける引退馬支援の牧場・タイニーズファームで牧場や馬の様子を実際に見ながら説明いただいた後、珠洲ビーチホテルに場所を移してさらに引退馬の利活用や角居氏が引退馬支援のために設立した「みんなの馬株式会社」について語り合っていただきました。司会は競馬番組でキャスターを務める梅田陽子アナウンサーです。


左から、梅田 陽子/飯塚 知一/角居 勝彦
左から、梅田 陽子/飯塚 知一/角居 勝彦

名伯楽・角居勝彦

能登半島での挑戦


梅:こんにちは。今回は石川県珠洲市の奥能登に来ています。


飯:遠かったですけれども、宿泊したホテルで人柄の良さを感じました。角居さんもいい場所を選んだなと。


梅:はい、そんなわけで今回のゲストは2021年2月に惜しまれつつ調教師を勇退され、この珠洲市で引退馬を活用した活動をされていらっしゃいます、元調教師の角居勝彦さんです。


角:よろしくお願いします。


梅:来ちゃいました、奥能登。


角:最果ての地という絵もありますけど、行き詰っている感じも少しありますけどね(笑)


梅:なかなかいいところですね。


石川県珠洲市にあるタイニーズファーム

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飯:なぜこの地を選ばれたのですか?


角:調教師を引退して石川県の能登に帰ってこなければいけない宗教的な事情がありまして。人口減少や高齢化が進んでいるエリアですし、僕がやっているような宗教的な活動など進まないだろうなというのはベースには考えていました。その中で、自分の特技のうち1番力があるとしたら馬を取り扱うということだと思いましたので、その馬を使った活動をする場所を能登半島の先端で探していきたいというタイミングで、実は地域移住したいという方を寄せるというイベントを東京でやっていたんです。それで事務局(一般財団法人ホースコミュニティ)にどこか馬を取り扱いたいという地方の方はいないかと聞いたら、たまたま珠洲市のタイニーズファームさんという方が動物とともに循環型農業をやっているので1回行ってみたらということで訪ねてみました。


飯:ここは元は牧場だった土地ですか?


角:元は牛の牧場です。


梅:今はどんな感じなのですか?


角:今は馬は3頭で、スタッフは私の他に3人来てくれています。元栗東トレセンで調教助手をやっていた人たちばかりなので、普通に乗れますし、馬の取り扱いは出来ますね。


飯:サラブレッドですから、非常にデリケートですから。


角:やはり乗馬をやられている方で、サラブレッドは触るのも嫌だという方が結構おられますからね。


梅:そういう意味でも心強いスタッフが、能登の角居先生のところに集まりましたね。


角:そうですね。半分、拉致みたいですけどね(笑)


飯:これから馬は増やす予定はあるのですか?


角:どんどん馬を増やしていこうかなとは思っているのですけど。


飯:どうしても限界がありますよね?


角:このエリアの中ではもう1、2頭増やせればというところかなと思います。実際馬房は3つしかないので。(厩舎は)今年頭にクラウドファンディングで作りました。3馬房と物置です。


梅:馬の牧場を始めるにあたって地域の方とのやり取りなどはどうでしたか?


角:馬は危なくないのかとか、やはり馬糞の匂いですとか、農業をやられている方が多いので、そこを心配された方が多かったですね。身近なエリアの中での住民説明会をやらせてもらったのですが、馬の糞尿は元々作っているものに影響はないのかという心配はありましたけど、すでに牛はやられていたのでそれほど抵抗感はなかったとは思います。あとは危険はないのかというところの心配だけですけど、小さい子に遊びに来てもらったり、年配の方が寄ってくださったらそれに対して受け答えしているところです。


梅:その積み重ねで今に至るという感じですか?


角:そうですね。ちょっと新しいことをやってちょっと人を呼んでもらってという感じで、そういうことを手探りしながらですね。



地域や行政も巻き込み成功モデルを

梅:主にどういう活動をされているのかも教えてください。


角:ここにいるのは、乗馬クラブでもいらない、繁殖でもいらないと言われて行き場を失ってしまった馬たちなので、特にたくさん乗って運動できるわけではないんですよね。逆に言えば跨って運動するだけ、常歩だけだったらできるので、跨ってこの環境を見てもらうというのがベースです。馬の最大の魅力は人を引き寄せてくれるところ。みんな「可愛い」と寄ってきてくれて、近づくと「でかい」となって「怖いっ」ってなって(笑)


飯:それだけ安心な馬を作っているから可能なのですね?


角:そうですね。初めて入ってきてくれた人も距離感ゼロで。


飯:最初に怖い思いをすると、子供はもう寄り付かないですから、安心な馬を作るということが一番大事ですね。


梅:お子さんとか地域の方を乗せたりもしているのですか?


角:無料で地元の子供達を乗せてあげたいという話はしているのですけど、まだ地域の人々は遠慮していらっしゃるのか…。


梅:これからその輪を広げていきたいという感じですか?


角:そうですね。ただ子供自体が少なくなってきているので、そういう心配はありますね。


梅:ここに来るまでに人とあまり出会わなかったので、確かに過疎化は進んでいるのかなとお見受けしました。


飯:こういうところですから、わりと自由に活動できるのだと思いますよ。人が多いといろいろな考え方の方もいらっしゃいますし、こういう活動は難しいですよね。


角:そうですよね。人がいなくなった分、馬は居心地が良くなっているというのは事実かなと思います。


梅:地元の人をうまく巻き込みながら、雇用などできたらいいですね?


角:ここは世界農業遺産という地域にも選ばれて、新しく開発を入れられないエリアになるんですよね。朱鷺をここに誘致したいということになれば、農業ですら農薬とか化学的肥料を使えなくなってくると。そうなるとこういう馬たちの堆肥を使うなど、馬で農業と言いますか…。


飯:雑草を食べてくれたり。


角:そうですね、耕作放棄地の処理ですとか馬糞から堆肥化するのを作っていこうということですね。


梅:まさにSDGsですね。


角:ここのエリアとしてはそれも狙っているところではあるみたいなので。


梅:タイニーズファームは夢が大きいですね。


飯:これをどれだけ広げられるか。全国的にというのも考えていらっしゃるのですか?


角:行政も少し入ってきていますし行政をからめた中で成功モデルになればいいと思っています。過疎化が進んでいる地方もそういうところで自立して循環する形ができるなら、自分のところでもやってみてくれないかという話になるといいかなとは思うので、とりあえず1つ成功パターンを作らないとと思っています。

行き場を失ったドリームシグナルと一歩を踏み出す


角:実はタイニーズファームには道産子のホースセラピーに使えるタイプの馬を最初に連れてくる予定だったのですが、このドリームシグナルが乗馬クラブで人を乗せると動かなくなるという話だったので、こちらに連れてきました。金沢競馬で誘導馬までやっていたのですけど、馬場入りして動かなくなったというのがありまして…。


梅:なぜ動かなくなったのでしょう?


角:背中に痛みがあったみたいですね。指示を出すと動かなくなるみたいで、その後も乗馬クラブで乗用馬になったのですけど、人を乗せると動かくなるのでずっと馬房に入っていました。するとストレスも溜まって噛みつくとか危ない行為も出てきてしまいました。最初に予定していた道産子はまだ若かったので買ってくれる人がいたのですが、この子は売れない馬になって行き先もなかったので、こちらに連れてくる形になりました。


梅:ところでドリームシグナルはこちらに来て性格が変わりましたか?


角:それこそ乗馬クラブにいた時は人参をあげると飛びかかるようにして食べていたという話でした。


梅:それが今は穏やかに?


角:それこそアブとか刺しバエがたくさん来ているので、それをハエ叩きで叩いてほしいって来るんですよ競走馬だったらそんなことやれないですよ。


飯:叩いたら馬が飛んでいってしまう。(ハエ叩きでアブやハエを叩く様子を見て)あり得ないことですよ。


角:今年の春先に来たレッドアルティスタは、アブがすごい苦手で、刺されたら叩けってものすごい勢いで走ってやって来るんですけどね(笑)。


タイニーズファームの厩舎。

馬房の扉は開いたままで、室内は広めに設計されている。

一つの馬房に数頭が一緒にいることも珍しくないという。


速く走る馬作りから、速く走らない馬作りへ

飯:角居さんは今までサラブレッドをいかに速く走らせて勝たせるかということが仕事でしたが、今度はいかに走らない馬を作るか。それだけに難しい仕事だと思いますよ。


角:僕が跨ってしまうと競走馬に乗っていた癖がついていますので、馬が動くように(自分が)動かしてしまっているんですよね。そうすると馬がピリピリとしてしまうんです。


梅:先生やスタッフさんがいますけど、乗り方は競走馬の時とは変えるんですか?


角:基本的にはあまり追い込まないで、すぐに動いてしまわないような乗り方になりますね。


飯:馬は乗り手の技量を跨っただけでわかってしまうので、馬も緊張しますし。


角:緊張させないように乗るっていうのが必要でしょうけどね。ただバランスが崩れてくると歩様異常が出てきたりするので、バランスを整えてあげながらスイッチが入らないように乗るという。


梅:繊細で紙一重ですね。


飯:それだけ面白いことをやっているということです。楽しいですよね?


角:そうですね。スイッチがオフになっていけば、それはそれで可愛いですし。


飯:可愛いんですよ、馬は。一緒に寝れますよ。私寝てましたから。それだけ信頼されていれば、こんなにすばらしい動物はいないですよね。


角:携わっていけば段々馬の癖がわかるようになって、距離感が掴めるようになると1人の人間と1頭の馬というパートナー関係を作れます。乗馬にはたくさんの技術がありますけど、信頼関係ができれば扶助は関係なく馬は動けてしまうところがあるんです。


飯:そうなると手綱もいらないですから。


梅:素敵。素晴らしい関係ですね。


角:そういう関係を是非いろいろな人に勉強してもらえれば。相性もあると思うんですけどね。


飯:いずれにも共通しているのは、大事にして愛情を注げば応えてくれるということです。


角:はい、そういう動物です。



馬を救うために私たちができること


馬とともに地域活性化を

梅:今度はタイニーズファームから場所を移して、ここ珠洲ビーチホテルの一角をお借りしてさらにお話を伺います。ファームからは馬も連れてきていただきました。このようにホテルでも活動はされているのですか?


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角:いえ、今日が初めてです(笑)


梅:これからこのように皆さんに見ていただいたり知ってもらうような活動をされていきたいと考えているのですか?


角:このビーチホテルの目の前は、まだ許可が取れていないのですが、この海岸沿いの東寄りにある、鉢ヶ崎ケビンというところでは、馬に乗ってもらって海の中に入っていったり、海岸散歩をする取り組みを始めています。


梅:馬と一緒に海に入りたいですね。


飯:それは人間も馬も両方が気持ちいいと思います。


対談後、海岸散歩を飯塚会長と梅田アナも体験しました!


角:タイニーズファームは真夏の時期、日陰がなくて風も吹かなくなるので、夏バテに近い症状になりかけたので、それでトコトコ海岸まで歩いてその途中にも、地元の方や観光客に振り向いてもらえるという感じになりますけど。


梅:地元の方もビックリされますか?


角:そうですね。車を馬の横で停めて「写真撮ってもいいですか?」とか、「今日も元気ね」みたいな(笑)。


梅:こちらのホテルでは、タイニーズファームに最初に来た馬・ドリームシグナルにまつわるデザートが?


角:そうです。ドリームシグナルのパフェを作ってくださって、売り物にしてもいいですか?と問い合わせがあって是非是非と言って。


飯:パフェの上にお馬さんが乗っていましたね。


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珠洲ビーチホテル内レストラン「典座」

どりちゃんのクッキーつき「季節のフルーツパフェ」


梅:先生はこちらに来てどのくらいたちましたか?


角:もう1年ちょっとですね。ドリームシグナルで地元の人に理解を得ながら、ゆっくり…と思っていたのですけど、マスコミも話題にしてくれたというのもあるし、地元の方も良いね、と言ってくださったというのもありまして、行政の方からこれを観光の目玉として…ということで、去年の暮れにモニターツアーというのを15人ずつ4組をお招きして行いました。それもことのほか反響があったので、このエリアの観光の取り組みの1つにしていければと。


飯:地元の活性化につながるといいですね。


梅:行政など関わる方が増えていくと、いろいろ課題も見えてくると思うのですけど。


角:馬を受け入れる態勢を作るためには人材や馬をずっと確保しておく土地や場所、環境も必要になってきます。1年ちょっとでここまで来ちゃっているので、もっともっと頑張らなければいけないという感じです。それもあって、今「みんなの馬株式会社」という株式会社体制でお金を確保することと、そこの中で収益性を上げていくという取り組みを、ペースを上げるためにやっています。


梅:こうして珠洲市に来て角居先生とお話されてどんな印象ですか?


飯:さっき角居さんがおっしゃったように、こういうことはすごく時間がかかるんですよ。ですから1年でこれだけのものを作ってしまうというのは正直驚いています。厩舎にしてもそうですし、馬にとって非常に環境のいいものを作って、なおかつ地元の活性化に繋がり、今はお子さんを呼んで乗馬もされているというので、ここまで、3段階一気に作り上げた努力は大変だったのかなと想像しています。


梅:実際、大変でしたよね?


角:調教師時代からこういう妄想をたくさんしていました(笑)。まだ現役の調教師でお金を使える時代に、いろいろなエリアに行って課題を聞いたり、(エリアごとで)どういう取り組みをして収益構造を作っているのかなど、こういう活動をされている団体からお話を伺っていましたので、ここのエリアならどのような取り組みが合うのではないかとか…。


企業のバックアップで大きく前進

飯:調教師時代は収入があったわけですよね?我々の預託料から…(笑)


角:そうです、預託料で…って、ちゃんと賞金で稼いでましたよ(笑)


飯:今は以前のような収入源がなくなりましたが、どういうところから資金を?


角:こういう構想を地元の起業家にお話をすることで、アステナホールディングスという製薬会社のバックアップと、地元の北国銀行から融資を受けています。そこで人材を呼び込めて、それができたことで馬をもっと多く確保できる準備ができたのが1番大きいですね。


梅:能登に縁のある社長さんなのですか?


角:全然なくて東京生まれの東京育ちとおっしゃっていました。東京の本社機能の一部をこちらに移転したんですよ。(珠洲市は)すごくいい場所で地元の子供たちの宝物だということで、この土地を守りたいとずっと考えていらっしゃいました。馬には人の手がかかった施設は馬小屋程度でいいですし、馬自体は自然環境を壊さないので、これはいいタイアップになりそうだということで、昨年の暮れに紹介いただきました。


飯:それは大きなバックアップですね。


角:ここに花王とかNTT西日本などがグループになってこの地域を盛り上げようという活動の中の1つが、僕たちの馬の取り組みという感じです。


梅:このあとも第2、第3ムーブメントが来る予定ですね?


角:そうですね、活動が大きくなっていけば、そのような企業とのコラボが入ってくるのかなと思います。


飯:角居さんは障害者を支援するサンクスホースプロジェクトをやられていましたけど、企業でも鬱になる人などがいますよね?そういう人たちが馬と接することによって、状態が改善していくことも考えられますよね?


角:そうですね。ホースセラピーに関しては珠洲市の行政からその活動を盛り上げてもらいたいという話になっているのと、まだ具体的な活動はしていないですが、不登校などになった子に無償で馬の仕事や馬の乗り方も教えますからと話をしてあります。


引退馬支援に取り組むそれぞれの理由と課題

梅:飯塚会長はJRAの「引退競走馬に関する検討委員会」の委員をされていますが、そもそもなぜ引退馬支援に取り組もうと思われたのですか?


飯:競馬で楽しませてもらって、馬に恩を返さなければいけないという気持ちがあったわけです。それと実は馬主になって馬が走らなくて馬主をやめようと思っていた時期があったのですが、オープン馬になった1頭の馬との出会いがありまして。それがシャドウクリークでした。その馬のおかげで馬主を33年ほどずっと続けられていますし、そういう馬はやはり思い出もありますし、大事にしなければならないと思いました。


梅:シャドウクリークはまだ元気で過ごしているのですか?


飯:はい。引退後はシャドウクリークを北海道の生産牧場に帰してずっと預託しています。お金がないとできないと分かっていましたので、現役時代は通帳を作ってシャドウクリークが勝つたびに(余生を過ごさせるための)貯金をしていました。6勝もしてくれたので、600万ほど貯まりました。


1997年バーデンバーデンC(OP)を優勝したシャドウクリーク。

現在は生まれ故郷の北海道勇払郡で余生を過ごしている。


梅:馬主さんの意識も大事ですね。一生をかけて守ってくれる馬主さんというのは、難しいのかもしれないですけど。ところで「引退競走馬に関する検討委員会」での啓蒙活動の成果は感じられますか?


飯:5年ほど前に立ち上がったのですが、現在引退馬が余生を送る養老牧場や乗馬に仕上げるためにリトレーニングを行っている牧場など全国の百数十カ所を全部調べて活動状況によって援助金を出すという活動をしています。ただお金を援助するということだけではなく、考えていかなければいけないことがまだまだたくさんあると思います。


梅:オーナーサイドから引退競走馬について相談されることも増えましたか?


飯:そうですね。引退競走馬への関心は高まっているのは間違いないと思います。


梅:角居先生のところにも、そういうお問合せは以前より増えていますか?


角:そうですね。(引退馬について)言葉にできるようになったという感じですね。以前はそれすらタブー感が少しありました。それが今では(引退後)どうなっていくのですか?助ける方法はないのですかという問い合わせはどんどん増えています。実際にそういう活動や取り組みに協力したいというファンの方が増えてきている感じがしますね。


梅:そういうふうに馬主さんの意識を変えるのはなかなか難しいですね。


飯:それは難しいです。競馬は娯楽、馬は経済動物という認識の人と、これまで自分を楽しませてくれた馬だから大事にしていきたいという方など、いろいろな考えの方がいらっしゃいますから、引退馬を助けましょうというのは非常に難しいことですよね。


梅:どうしたら良いのでしょうね?


飯:オーストラリアの例を取ると馬主が購入した時にパスポートを持たされます。最後まで責任を持つということです。結果どうなるかは別としてね。乗馬になるのか、里親に引き取られて余生を送るのか、屠畜なのか、(引退後の)行先がはっきりしているんですよ。日本の場合は、ファジーになってしまうというところに社会的問題があるのではないかと思いますが、いかがでしょう?


角:競馬から出たから乗馬に行ったのでしょう、後はわからないというのではなくて、乗馬としても楽しめますが、日本には馬を食べる文化もありますから、それを闇にしようというのが問題だったような気がします。だからそれをちゃんと認識して、そういうことも僕たちはちゃんと知っておくべきだというのも含めた馬文化というものを構築すべきだと思います。


飯:そういうことです。例えば100頭いて2,3頭しか救えないのなら意味がない、ではなくて、救える2,3頭をどう飼養するのかや、どう援助をしていくかの方が大事だと思います。


梅:原点に戻りますけど、角居先生はなぜ引退馬の支援を始めようと思われたのでしょうか?


角:石川には金沢競馬場はありますけど中央競馬で盛り上がっている地域ではありません。それでも僕の名前や立場を上げてくれたのは馬でしたから、その馬で恩返しするチャンスがほしいと。ここ石川は、僕の祖父母のお里なので、地元にも恩返しできるチャンスがあればと思います。ここに帰ってこなければならない縁があったのかもしれません。そういうこと(引退馬支援)をやっても無理だぞという声が圧倒的に強かったですし、数頭助けたところで何か役に立つのかという声もありましたが、それを(他の人に)押し付けてしまうのも違うなとも思います。


飯:そして、馬の幸せを、本当に僕らがわかっているのかということですね。どういう形がいいのかということを常に考えなければならないと思います。馬は何か役割を持って生きていることが望ましいと、私は思うのですが。


角:この子たちは生まれてきた以上、何かしらのお金を生み出さないといけないと思います。限界まで削ってみたのですが、8万~10万円くらいは(飼養するための費用が)かかってきます。人件費プラスこの馬たちのケアなど、

これが最低のボーダーラインだと思うのですけど その8万円を生み出す役割をどこに作るかというところが取り組みで大事なところだと思います。


馬が生きる道を広げていく

梅:先生がこうなっていったらいいなというお気持ち的なこともお聞かせいただきたいのですが?


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角:この鉢ヶ崎というエリアの中で1頭で8万稼ぐというのは大変な作業になると思うんです。当然人を乗せてどんどん動ける馬もいると思うし、全く人を乗せられないという馬もいると思う。ある程度の頭数を抱える中で社会的な役割を持って、このエリアの中でどういう働きができるのか。間接的にでも良いので、行政の負担を減らすことになれば、この馬たちの生きる道につながっていくと思っています。人の福祉と馬の福祉をセットにするという、こういう取り組みに絡めていくと少しずつ馬が生きる道を広げていくきっかけになるのではないかと思いますし、そのような活動を通して、馬を知らない方々と、更につながっていくことが大きなテーマだと思っています。


梅:気になっていたのですけど、先生が着ている、みんなの馬株式会社のポロシャツ、可愛いですよね。


角:角居厩舎はユニコーンをモチーフにしていました。その業態の中で突出した企業のことをユニコーンカンパニーと言うらしいですね。そして、地域貢献や社会的な役割を持つという会社をゼブラカンパニーと言うらしいので、それを組み合わせて「みんなの馬株式会社」のロゴにしました。


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角居氏がCOOを務める、

みんなの馬株式会社のロゴが入ったポロシャツ。



梅:最後に角居先生、折角なので今後の活動について何かお話ししたいことありますか?


角:そうですね、月々の会費で馬を支援してくれる会員も募集していますし、1頭8万円で馬の預託もやっていきたいと考えています。新しい牧場もできますので、たくさんの馬の預かりを予定しています。是非会社のホームページも見てください。


飯:より多くの方々が、こうした活動に関心を寄せていただくことが何より大切だと思います。



STAFF

direction・edit|Kenichi Hirabayashi(Creem Pan)

Writer|Sachie Sasaki

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